★患者さんとのやりとりから
診療上、基礎化粧品についての質問をされることが多くあります。
以前は、“化粧品なんて、
何でも一緒"、とたかをくくっていたのですが、
どうも、その化粧品で、
皮肉にも、肌を悪くしているケースを多くみかけるに及んで、
自分なりに、いろいろ調べ始めたところ、
率直に言って、
この業界、思っていたより疑問に思うことが多々ありました。
実は、このことが、
結局は、自分たちで化粧品を作ることになったきっかけでした。
仕事柄関わりを持たざるを得なかった、というのが本音です。 ★どんな化粧品がよいのか、を真面目に考えると
どんな化粧品がよいのか、
消費者サイドとしては、
要するに、女性にとっては、
物としての品質云々よりも、
まずは、その使用感や
化粧のりがあって、
そして、全体的には、
どうしても、イメージに引っ張られるということがあります。
口コミ情報などにしても、
やっぱり、‘本来の肌によい'という事はあまり語られていないようです。
このコラムでは、美容外科医としての視点から、
化粧品の品質についての情報を少しずつでも提供していくつもりです。
どんな化粧品が安全で、肌に有用なのかを、
皆さん自身が考えられるきっかけにでもなれば幸いです。
★ある化粧品会社の会議風景から
まず最初に、自然化粧品の分野では世界的権威と評価の高い、
Aubrey Hampton の著書、「本物の自然化粧品を選ぶ」から、
「架空の化粧品会社の幹部会議」、を紹介します。
(少し長いので 2 回に分けます)
ニューヨーク、マンハッタン。
ここは高層ビルが立ち並ぶロックフェラーセンターの近くです。
最も地価の高い、
いわば「ビッグアップルのつやつやした皮の部分」といってもいいでしょう。 株式会社クレオゲール化粧品本社は、
そこに聳え立つ現代的なビルの 32 階にありました。
化粧品業界での高い地位を見せ付けるために、
高い家賃を払っていたのでした。
クレオゲールは、他の多くの化粧品会社と何ら変わったところがない、
典型的な化粧品会社でした。
女性に商品を売る会社だというのに、
社内に女性幹部はたった一人ベティだけ。 今やどこの会社にも、女性幹部は何人もいます。
一方、社員を解雇することにおいては、
近所の大会社をしのぐほどでした。
また、大手化粧品会社と同じように、
クレオゲールではある一つの役職が崇拝されていました。
それは化粧品化学者と呼ばれる人です。
化粧品化学者は常に男性で、ドクと呼ばれていました。
博士号(ドクター)を持っているからです。
ドクはいつも堂々としていました。
というのはドクは、
50 セント(約 60 円)の人工化学物質を混ぜたものを、
若返りスキンクリームとして、
50 ドル(約 6000 円)で売ることができるからです。
こんな魔法のようなことができるのは、
社内でただ一人化粧品化学者だけです。
ドクは魔法をやってのける司祭なのです。
そして、誰もドクのすることを理解できないのをいいことに、
たいした非難を受けずに明らかなミスを犯すこともできました。
これは他の部署とは大違いです。
例えば、マーケティングなどに携わる幹部たちは、
時代の一歩先を行くと見せるための宣伝をする事が役目なので、
批判されないかといつもビクビクしていなければならないのです。
さて、午前十時を過ぎ、
ベティやドクをはじめ管理職員が、
次々と会議室に集まってきました。
最後にファインゴールド社長がやってきて一番上座に座りました。
机の真ん中には新製品のシャンプーが置かれていました。
これはシャンプーの世界に革命を起こすだろうと、
みんなから期待されています。
マーケティング部長によると、
この新しい商品の名前は、
ファインゴールドシャンプーになるという予定でした。
製品開発会議は午前十時三十分に即座に始まりました。
「ファインゴールドシャンプーは、
天然の金の油からできているのです。
だからこういう名前なのです。」と、
マーケティング部長は調子よく言いました。 「おもしろい言葉遊びですね。けれど、金の油って何ですか?」と、
販売部長は尋ねました。 「ゴールデンカモミール油、ゴールデンホホバ油、
ゴールデン小麦胚芽油、ゴールデンハニーです。」と、
マーケティング部長がせきこんで答えました。 「いやあ、しかし、それらのゴールデンオイルは、
たくさんの金を必要とするぞ。」と、
ファインゴールド社長は大声で言いました。 「ドク、これはどのくらい金がかかるのだ? ドク!!」
他の化粧品会社の社長と同じく、
ファインゴールド社長は、
ボトルの中の液体にお金をかけすぎることには反対でした。
彼は、消費者がパッケージのデザインや、
有名人を使った宣伝にひかれて商品を買うのだと、
固く信じていたのです。
社長が子供の頃、彼の母は彼を寝かせつけるときに、
こんな子守唄を歌って聞かせました。 「安く買って、高く売る・・・・・、安く買って、高く売る・・・・・。」 ファインゴールドは、この子守唄を、
スローガンに化粧品帝国を作り上げたのです。
もし化粧品の中身にお金がかかりすぎたら、
責任を取って会社をやめさせられるのは化粧品化学者でした。
一滴でも値段の高いものを製品に入れたら、
ドクは短期大学の下っ端助手として、
働かなければ食べていけないはめになるのでした。 「何だって?」 いつものように居眠りしていたドクが目を覚ましました。 「このシャンプーのコストだよ、ドク!」 ボビーが質問を繰り返しました。 「ゴールデン天然油って?」 「ニューファインゴールドシャンプーに入れるんだよ。高いのか?」 「シャンプーか・・・・・。
水とラウリル硫酸ナトリウムと・・・・・、
ベタインとコカミデス・・・・・、
単なるシャンプーです。」と、
ドクはつぶやきました。 「知ってるよ。
けど、ゴールデンオイルはどうなんだよ。」と、
宣伝マンがたずねました。 「ほんの少ししか入れませんよ。
結局、何にもなりはしないんだから。」と言いながら、
ドクはまぶたを閉じました。 「ベティー、新しいシャンプー試してみたか?」
ファインゴールドがたずねました。
ベティをそばにおいているのは女性の反応を聞くためなのでした。 「ええ、社長。髪がやわらかくなって、
金色に輝いているように見えましたよ。」 実際は、そのシャンプーはベティーの髪を乾燥させ、
生気を失わせましたが、
ベティーはそんなことは一言も言いませんでした。
どうせ誰も聞いてくれないからです。 (続く) |