この知見は、 1965-1993 年に美容目的の人工乳腺を埋め込んだスウェーデン女性 3,400 例以上を対象とした研究から得られたものである。これらの女性が人工乳腺を留置した年齢は、平均約 32 歳であった。
人工乳腺の留置後 30 日経過してから、死亡、スウェーデンからの出国、または 2002 年までのいずれかが到来するまで、これらの女性を追跡調査した。平均追跡期間は約 18 年であった。
この研究期間中、スウェーデン女性の一般集団と比較して、研究参加者の乳癌の発生は予測された値よりも少なかった。しかしながら、研究参加者の肺癌の発生は、スウェーデン女性の一般集団より 2 倍以上多かった。その他の癌(リンパ腫、肉腫、脳腫瘍、多発性骨髄腫など)で目立ったものはないことが、この研究で示された。
米国際疫学研究所(メリーランド州ロックウェル)の Joseph McLaughlin, PhD が研究に参加していた。
喫煙と肺癌
この研究では、人工乳腺を埋め込んだ女性が癌を発症する理由(または発症しない理由)は示されなかった。多彩な因子(遺伝子、発癌性物質への曝露、ライフスタイルなど)が癌リスクに影響する可能性があるため、医師が癌の原因を特定することは困難であることが多い。
しかし、 McLaughlin 博士らは、今回のデータが意味している可能性のある事柄について、いくつか考えを持っている。
例えば、今回の研究対象となった人工乳腺を埋め込んだ女性は、スウェーデン女性の一般集団と比較して喫煙率が高かった。すべての肺癌患者が喫煙者というわけではないし、すべての喫煙者が肺癌になっているわけではないが、喫煙は昔から肺癌と関連している。
この研究参加者のサブグループを対象とした初期の研究では、「人工乳腺を埋め込んだ女性はスウェーデンの一般集団よりも現在、喫煙者である割合が 2.8 倍高かった」と、 McLaughlin 博士らは述べている。
乳癌に関する知見
人工乳腺を埋め込んだ女性は、「乳癌リスクを低くする可能性がある」特徴をいくつか持っていた可能性がある、と研究者らは述べている。
これらの特徴には、最初の出産時の年齢が若年であること、出産した子供の数が多いこと、 BMI (肥満度指数)が低いことなどが挙げられる。しかしながら、今回の研究データでは、出産した子供の人数や出産年齢については提示されなかった。
乳癌リスクが高い女性は人工乳腺を埋め込むことが少ないのかもしれないし、あるいは人工乳腺を埋め込む前のスクリーニングで乳癌リスクの高い女性が除外されているのかもしれない、と研究者らは述べている。
このほかには、人工乳腺を埋め込んだ女性では乳癌の検出が遅れるという説明も成り立つ。「しかし、これまで数多くの研究によって、人工乳腺を埋め込んだ女性のほうが人工乳腺を埋め込んでいない女性よりも、より進行したステージで乳癌を診断されたり生存期間が短いわけではないことが示されてきた」と、 McLaughlin 博士らは述べている。
研究者らの結論
研究者らは、今回の知見は他の観察研究と一致していると述べている。観察研究では各集団における傾向は示されるが、因果関係は証明されない。
McLaughlin 博士の研究班は、今回の知見を次のように要約している。「平均 18 年間、最長 37 年間の追跡調査を行って、人工乳腺埋め込み術を受けた女性の乳癌リスクが低いことがわかった。これは、ライフスタイルまたは出産に関する特性の差によるところが大きいと考えられる。脳腫瘍、リンパ腫、肉腫、多発性骨髄腫についてもリスク上昇は認められなかった」。
研究参加者に埋め込まれた人工乳腺の種類については、この研究では触れられていない。
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